前文#
宇宙政府は、出生地、住所、領土、武力による実効支配を、精神上の帰属や制度の正統性と同一視しない。
私たちは、国家に抱き合わされた通貨、資格、行政サービス、政治参加、文化、法的管轄を分解し、選択・比較・検証・退出できる仕組みへ変える。宇宙法は、そのための命令集ではなく、強制を減らし、共同作業の条件を明らかにするための改訂可能な規範である。
第一条 帰属の自由#
何人も、出生地、住所、法的国籍を理由として、精神上の忠誠または唯一の帰属を強制されない。宇宙国民は、他の文化的・地域的・精神的所属を併有でき、いつでも離脱できる。
- 目的:心の国籍を自己選択に戻す。
- 濫用禁止:公的国籍・身分の偽装、他者への加入強制、離脱妨害。
- 検証:加入・離脱が本人の意思だけで完了し、不利益条件がないこと。
第二条 非領土#
宇宙政府は、土地の占有、領有の宣言、武力による境界の維持を正統性の根拠としない。
- 目的:統治と土地の独占を切り離す。
- 濫用禁止:私有地への侵入、土地権利の無視、領土奪取の呼びかけ。
- 検証:宇宙政府への参加条件に居住地・不動産所有・移住を要求しないこと。
第三条 最小強制#
強制は、他者への具体的かつ重大な危害を防ぐために必要で、より弱い手段では足りない場合に限る。抽象的な不快、権威への不服従、慣習との不一致だけでは強制の理由にならない。
- 目的:便利さや多数派の好みを、強制の根拠に変えない。
- 濫用禁止:「安全」「公共」「秩序」という語だけで強制を正当化すること。
- 検証:危害、対象、因果、必要性、代替手段を提案ごとに明示すること。
第四条 機能分離#
通貨、決済、資格、教育、福祉、保険、認証、紛争解決、情報提供を、一つの組織への加入や忠誠へ抱き合わせない。
- 目的:国家と同じ巨大独占を宇宙政府内に再生産しない。
- 濫用禁止:一つのサービス利用を理由に、無関係な規則・支払い・所属を強制すること。
- 検証:各サービスを個別に参加・拒否・退出できること。
第五条 決定範囲の最小化#
共同決定を行う前に、各人が別々に選べないかを検討する。事実認識は証拠で更新し、価値の違いは可能な限り選択肢の併存によって処理する。多数決は、共通資源など分離不能な残余問題に限る。
- 目的:投票で何でも決める文化を避ける。
- 濫用禁止:多数派であることを、事実の正しさや少数者への無制限な負担の根拠にすること。
- 検証:提案に「個別選択では解けない理由」を付けること。
第六条 検証可能性#
制度、規則、共同事業は、目的、対象、費用、期待する効果、代替案、測定方法、失敗条件を公開する。
- 目的:「決まったから正しい」を廃止する。
- 濫用禁止:測れない価値をゼロとみなすこと、都合のよい指標だけを事後選択すること。
- 検証:開始前に評価項目を記録し、結果と元データの範囲を公開すること。
第七条 利益相反の公開#
提案・評価・発注・認証に関わる者は、金銭、雇用、親族、組織、地位その他の重要な利害関係を明示する。
- 目的:権威や善意の外観で自己利益を隠さない。
- 濫用禁止:利害関係があることだけを理由に発言を封じること、公開情報を嫌がらせに使うこと。
- 検証:意思決定記録に利害申告欄を置き、未申告が判明した場合の再評価手順を設けること。
第八条 退出と可搬性#
参加者は、合理的な予告のもとでサービスや共同体から退出できる。本人が作ったデータ、評価、資格、残高その他の記録は、法令・安全・第三者の権利に反しない範囲で持ち出せる。
- 目的:退出不能な共同体を作らない。
- 濫用禁止:離脱への報復、過大な解約障壁、データの人質化、第三者情報の持ち出し。
- 検証:加入時に退出方法とデータ移行方法を示すこと。
第九条 期限と可逆性#
新しい規則と共同事業には、原則として見直し日または失効日を設ける。継続は、存在していることではなく、効果と必要性によって再承認する。
- 目的:制度が惰性と関係者利益だけで永久化することを防ぐ。
- 濫用禁止:検証なしの自動延長、撤回不能な大規模実施を初手にすること。
- 検証:全規則に状態、見直し日、継続理由、廃止条件を表示すること。
第十条 公開改訂と分岐#
宇宙法の変更は、提案者、変更理由、根拠、反対意見、差分を公開して行う。重大な不一致が解けない場合、他者へ同じ規則を強制せず、互換性を保った別版へ分岐できる。
- 目的:法を権力者の所有物にせず、改訂と退出を可能にする。
- 濫用禁止:履歴の削除、密室変更、異論者への報復、同名を用いた詐称。
- 検証:Git等で全版の差分、提案、議論、採否理由を閲覧できること。
改訂規則#
宇宙法の変更提案には次を付ける。
- 変更する条文と差分
- 解決したい問題
- 影響を受ける人
- 根拠と反対根拠
- 強制が増減する範囲
- 代替案
- 検証指標
- 見直し日または失効日
提案の採否は、賛成数だけで決めない。まず、条文の対象を分離できないか、複数版を併存できないか、試験運用で可逆性を保てないかを検討する。
この草案の状態#
- 状態:草案
- 法的効果:なし
- 対象:宇宙政府プロジェクト内部の任意参加者
- 次回見直し:公開議論開始から90日後
- 廃止条件:強制を減らすより増やす効果が大きい、または実際の参加・改訂に使われない場合