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宇宙政府を自分で壊す――十の弱点と設計応答

宇宙政府の主張に対し、自らの基準である「検証可能性」と「退出可能性」を用いてストレステストを行う。Sonnet 5、Qwen、DeepSeekの批判への設計応答。

宇宙政府は「検証できること」と「退出できること」を大切にしている。それならば、真っ先に検証のメスを入れるべきは、ほかならぬ宇宙政府自身であるべきだ。

この論考では、今の宇宙政府の構想に向けられうる10の根本的な批判をあえて並べ、それぞれに対して具体的な「設計」のレベルでどう応えるかを提示する。まだ答えが出ていないものについては、正直に「未解決」と記しておく。

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1. 「検証できる」と言いながら、検証可能なデータがゼロ#

七原則の五番目には「目的、コスト、効果、代替案、失敗の条件を公開する」とある。しかし、このサイトを見渡しても、データに基づいて検証された命題は一つもない。理念ばかりが先行して、実証が後回しになっている。「他人には検証しろと言うくせに、自分たちでは何も検証していないじゃないか」という手痛い批判だ。

これは全くもって正当な指摘だ。そこで、まずは具体的な実例を一つ作ってみよう。

政策評価カード:自治体基幹系情報システムの標準化・調達(2025年度)#

国が進める自治体基幹系システムの標準化移行において、巨額の国費と自治体負担が投じられているが、移行コストの肥大化やベンダーロックイン、現場の業務効率化が十分に検証されていないという手痛い課題がある。

評価項目内容
目的全国の自治体システムの共通プラットフォーム化により、長期的な運用コスト削減と住民サービスの迅速な改修を実現する
コストデジタル基盤改革支援補助金など国費・自治体負担合わせて数千億円規模(全国1,741市区町村)
効果指標移行完了後の年当たり運用保守費用の削減率(目標:移行前比3割減)および改修リードタイム
代替案(a) 一括移行ではなくAPI連携による段階的なオープンプロトコル化<br>(b) オープンソース(OSS)による共同開発・保守体制の採用<br>(c) 成果報酬型・SaaS型契約への切り替え
既知のリスク既存大手ベンダーへの過度な依存が残り、カスタマイズ不可による現場業務の破綻や移行費用の高騰が起きる
廃止条件移行完了後3年経過時点で運用保守費用の削減が達成されず、システムの追加改修費用が以前より増大した場合

この表の中身が本当に正しいかどうかは、行政事業レビューシートや自治体の調達実績を見れば誰でも検証できる。逆に言えば、誰も検証できないようなふんわりした主張は、そもそも議論のテーブルにすら乗らない。宇宙政府としては、こうしたフォーマットを実際の政策に当てはめていくこと自体が「検証可能性」の第一歩だと考えている。

次の一手:宇宙政府の最初のミッションは、これと同じような政策評価カードを10枚作り、データの出所と更新日を明記して公開することだ。

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2. 結局「退出できる」のはお金持ちだけでしょ?#

経済学者のアルバート・O・ハーシュマンは、1970年の著書『離脱・発言・忠誠』の中で、「退出(離脱)」は「発言(文句を言うこと)」よりも手っ取り早い解決策だが、どうしても資金や情報、移動する力を持っている人に有利に働きがちだと指摘した。

宇宙政府が「退出できること」を重視するなら、誰もが実際にその権利を使えるように制度を設計しなければならない。そうしなければ、「選べる自由」なんてものは結局お金持ちだけの特権で終わってしまう。

実はこれ、宇宙政府の「百年仮説」が自ら設定した「失敗の条件」そのものだ。この批判には、以下の三つの設計原則で応えたい。

設計原則1:一番ITが苦手な人に手続きのレベルを合わせる#

退出の手続きは、ITツールに最も不慣れで、最も時間がない人でも迷わず完了できるシンプルさを上限とする。

  • 退出は1ステップで終わること。ボタンを一つ押すか、紙を一枚出すだけ。
  • スマホやPCが必須の仕組みにしない。郵送、窓口、代理人による手続きのルートを必ず用意する。
  • 退出の手続きを、加入時よりも難しくしてはならない。

設計原則2:自分のデータは退出前に持ち出せるようにする#

参加している間に蓄積された実績、評価、記録などのデータは、退出時に標準的なフォーマットで丸ごと持ち出せるようにする。退出した途端にすべてのデータが消えてしまうようなシステムは、実質的に「退出者への罰」と同じだからだ。

設計原則3:「0か100か」ではない、段階的な離脱を認める#

すべてを捨てるか、すべてに従うかという「オール・オア・ナッシング」の退出は、依存度が高いほど難しくなる。だから、特定のサービスだけ利用をやめて、他はそのまま続けるといった「部分退出」を最初からシステムに組み込んでおく。国家が国民に「全面的な忠誠か、それとも国を捨てるか」を迫るような窮屈な構造を、宇宙政府が繰り返してはならない。

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3. 「機能を分ける」のが裏目に出るケース#

宇宙政府は「機能を切り離す(機能分離)」ことを掲げているが、何でもかんでも分ければいいというわけではない。実は、これまでの文書ではこの点に全く触れてこなかった。ここで真正面から取り上げておきたい。

分離することで生まれるコスト#

機能をあえてバラバラにすると、次のようなコスト(デメリット)が発生する。

調整のコスト: バラバラの組織が協力し合うためには、ルールのすり合わせ、合意形成、もめごとの解決といった手間がかかる。一つの巨大なシステムなら全く不要だったはずの手間だ。

規模の経済が効かなくなる: 水道や電力網、災害対応の初動などのように、一つの巨大な組織が一手に引き受けたほうが、結果的に一人あたりのコストが安く済む分野がある。

ネットワークの価値が分断される: 通貨や身分証、通信規格のように、「みんなが同じものを使っている」こと自体に価値がある場合、機能を分けることはその価値を壊してしまうことになる。

信用を確かめる手間が増える: 資格や証明書を発行する機関がたくさんできると、今度は「その発行機関自体が信用できるのか?」をいちいち調べる手間が増える。結局のところ面倒になって、「一番有名な大手の証明書でいいや」となり、寡占状態に戻ってしまうリスク(格付け会社の寡占などがその例だ)がある。

分離すべきではない領域の判断基準#

だから宇宙政府は、「なんでも絶対に分離すべきだ」とは言わない。以下の条件に当てはまる領域では、無理に分けるより統合しておいたほうが、社会全体のコストが低くなる可能性を認める。

スピードが命の領域: 大規模な災害、暴力の制圧、未知の感染症への対応など、悠長に話し合っている余裕がなく、一元的な指揮で素早く動くことが人命に直結する分野。

取り返しがつかない領域: 判断ミスが死亡事故や深刻な環境破壊など、後からではどうにもならない結果を招く分野。この場合は、あとから被害を救済するより、最初から統一基準で厳しく規制したほうが安上がりになる。

普遍的なセーフティネット: 救急医療、安全な飲み水、基礎的な教育など、誰もが生きていくために最低限必要なものは、「選んでやめられること」よりも「誰一人取りこぼさないこと」の方を優先すべき場面がある。

ただし、これらの領域だからといって「未来永劫、統合されているのがベストだ」とも考えない。技術や社会の仕組みが変われば、昔はひとまとめにするしかなかったものが、安全に分けられるようになることもある(郵便が電子メールになり、固定電話がスマホになったように)。この判断は絶対的なものではなく、定期的に見直していく。

宇宙政府のスタンスの修正:「機能の分離」から「提供主体の競争化」へ#

「機能をバラバラに分けること」自体は目的ではなく、あくまで手段だ。本当の目的は、独占による弊害——検証できない、やめられない、改善されない——を減らすことにある。

ここで重要なのは、「機能を統合しておくこと」と「国家が独占すること」はイコールではないという点だ。医療や防災のように機能が統合されているべき領域でも、その提供主体は競争的であってよい。たとえば「日本の医療制度」に固定されるのではなく、宇宙標準(スペース・スタンダード)の医療資格を持つ提供者が国境を越えて競争し、利用者が「日本の免許を信じるか」「宇宙の免許を信じるか」を選べるようにする。

つまり、物理的なインフラ(水道管など)の分離は難しくとも、情報や資格系の機能においては「提供主体の脱国境化・競争化」を進めることが、宇宙政府の機能分離の真の狙いである。

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4. 命に関わる分野の「資格」をどう設計するか#

国家資格を「お上の権威ではなく、単なる能力の証明書にしよう」と言うのは簡単だ。しかし、医療や建築、食品衛生など、ちょっとしたミスがダイレクトに人の死につながる領域では、そんな楽観論は通用しない。

国家資格が果たしている「安全装置」の役割#

いまの国家資格(医師免許や建築士免許など)は、実は以下のような複数の安全装置を一つに束ねたものだ。

  1. 参入ブロック:試験によって、最低限の知識すらない人を足切りする。
  2. 継続的な監視:免許の更新制度や、定期的な報告を義務付ける。
  3. 懲戒と排除:問題を起こした危険な人物の免許を取り上げる。
  4. 賠償責任の枠組み:ミスが起きたときに、誰がどう責任をとるかを明確にする(医賠責保険など)。
  5. 情報の格差を埋める:素人の患者には医者の腕前なんて分からないが、「免許を持っているなら最低限大丈夫だろう」というシグナルになる。

国家に頼らない安全設計のアイデア(スケッチ)#

宇宙政府が「国家資格を今すぐ全部なくせ」と主張しない理由はここにある。上の安全装置を何も考えずに取っ払ってしまえば、人が死ぬからだ。もし国家に頼らずに同等の安全を担保するなら、次のような設計が必要になるだろう。

今の安全機能今の国家資格のやり方宇宙政府的な代替案のアイデア新たに生じる問い
参入ブロック国家試験一発勝負複数の民間機関やAIによるスキル判定+実績ポートフォリオ「その認定機関(AI)がちゃんとしているか」を誰がどう評価するのか?
継続的な監視数年ごとの免許更新AIによるリアルタイムな行動ログ解析と統計的な「異常検知」どこからを「異常(外れ値)」とするかという閾値の価値判断を誰が行うのか?
懲戒と排除お上による行政処分認定機関同士でブラックリストを共有+自動的なシステムペナルティブラックリストが不当な村八分(私刑)に使われないか?
賠償責任医賠責保険など過去の安全実績で保険料が変わる「職業賠償保険」への強制加入どこからも保険加入を断られてしまった人はどう働くのか?
情報格差を埋める免許を持っているかどうか専門家ごとの成績や事故歴、客観的な評価がまとまった公開データベース個人のプライバシー保護とどう折り合いをつけるか?

上記の表にある「新たに生じる問い」に対する宇宙政府の回答は、「単一の絶対的な正解(国家)を設けない」ことだ。

たとえば、AIの異常検知によってスキル不足や危険行為を判定することは技術的に難しくない。しかし「どの程度の確率で異常とみなすか(感度と特異度のバランス)」は、統計学の問題ではなく、社会の「価値判断」である。だからこそ、一つの基準を押し付けるのではなく、厳格なAI判定基準を採用するライセンスもあれば、緩い基準のライセンスも存在し、最終的には「どのライセンスを持つ提供者を信頼するか」を患者(市場)自身が選択する枠組みを目指す。

ここで大事なのは、「まだ解決できていない課題」の欄が埋まっていることだ。宇宙政府は、これらの難題を「もう解決した」などと大風呂敷を広げたりはしない。クリアすべき問題をはっきりさせ、小さな実験で安全を確かめながら進め、ダメならすぐに元の状態に戻す(ロールバックする)スタンスをとる。

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5. ビットコインは「核心」ではない#

誤解されがちだが、ビットコインなどの暗号資産は、宇宙政府の最も重要なテーマというわけではない。あくまで「国だけが通貨を発行できるという常識を疑ってみるための実験ツール」の一つであって、それ以上でもそれ以下でもない。

宇宙政府の核心は、あくまで「国家が抱き合わせにしている機能(住所、所属、資格、通貨など)を解きほぐす」ことだ。自分の帰属先を選べることや、資格を分離すること、政策を検証可能にすることは、通貨の仕組みとはまったく関係なく成り立つ。

それに、ビットコインにはすでに知られているリスクが山ほどある。価格の乱高下、秘密鍵を自分で管理する難しさ、決済スピードの限界、そして膨大なエネルギー消費。もし「これらのリスクのほうが、実験で得られるメリットよりも大きすぎる」と判断すれば、実験はいつでも縮小・中止する。宇宙政府はビットコインの布教団体ではない。

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6. 思想的なルーツ――宇宙政府の考え方はどこから来たのか#

宇宙政府の構想は、何もないところから突然ひらめいたわけではない。実は、これまで語られてきた以下のような政治・経済思想の系譜の上に立っている。それぞれと重なる部分もあれば、あえて違う道を歩もうとしている部分もある。

アルバート・O・ハーシュマン『離脱・発言・忠誠』(1970)#

組織に不満があるとき、メンバーには「退出(やめる)」か「発言(文句を言う)」の二つの選択肢があるという理論。宇宙政府は、いまの国家が「選挙(発言)」だけを正しいルートとし、「退出」のルートを事実上ふさいでしまっている構造を問題視している。 違う点: ハーシュマンは「みんなが退出ばかりすると組織がダメになる」と考えたが、宇宙政府は「退出できる権利がちゃんと用意されているからこそ、発言(文句)も真剣に聞いてもらえるようになる」という間接的な効果のほうを重視している。

ロバート・ノージック『アナーキー・国家・ユートピア』(1974)のメタ・ユートピア#

たった一つの理想郷(ユートピア)を押し付けるのではなく、「色々なユートピアが並び立ち、人々が自由に選んで競争する枠組み(メタ・ユートピア)」を提案した哲学。宇宙政府の「色々なシステムが並立し、個人が選ぶ」というビジョンは、これの現代版とも言える。 違う点: ノージックは「個人の財産権は絶対に侵してはならない」という極端な立場をとったが、宇宙政府はそこまで原理主義的ではない。最低限のセーフティネットや環境問題の解決のためなら、みんなで合意してある程度財産権を制限することもあり得ると考える。

バラジ・スリニヴァサン『ネットワーク・ステート』(2022)#

まずはネット上で国境のないコミュニティを作り、少しずつ実績とお金を貯め、最終的には物理的な土地を買って「本物の国家」として国際社会に認めてもらおう、という最近のビジョン。領土に縛られないところから始める点は宇宙政府と同じだ。 違う点: 彼らの最終目標が「新しい国家になること」なのに対し、宇宙政府は国家になることを目指さない。国家の機能をバラバラにして選べるようにするのが目的なのに、自分たちが新しい国家になってしまえば、結局また同じ問題を繰り返すだけだからだ。

ジェームズ・C・スコット『国家のように見る』(1998)#

近代国家が、国民を管理しやすく(判読可能に)するために、無理やり単純なルールを押し付けて地域の複雑な知恵や文化を壊してきた歴史を批判した名著。宇宙政府の国家批判の根底にもこの考え方がある。 違う点: スコットは国家がデータや統計を取ること自体に疑念を向けたが、宇宙政府はむしろデータによる検証を重視する。「データ化が悪」なのではなく、「そのデータを誰が独占しているか」「見られる側に『そこから逃げる自由』があるか」が問題だと考える。

F.A. ハイエク「社会における知識の利用」(1945)#

世の中の知識は人々の間に散らばっていて、中央の偉い人がそれを全部集めて完璧な計画を立てることは不可能だ、という理論。「機能を分離して、色々な主体に任せよう」という宇宙政府のスタンスは、この知識分散の考え方を制度設計に応用したものだ。 違う点: ハイエクは「だから自由市場に全部任せるのが唯一の正解だ」と考えたが、宇宙政府は市場もまた万能ではない(失敗する)という立場をとる。

エリノア・オストロムの「多中心的ガバナンス」#

森や水産資源のようなみんなのもの(コモンズ)を管理するとき、「国家が管理する」か「完全に民営化する」の二択ではなく、地域コミュニティによる自主管理という「第三の道」がうまく機能することを実証したノーベル賞経済学者。宇宙政府が「国家か、さもなくば市場か」という極端な二択を超えようとしている試みは、彼女の研究の延長線上にある。

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7. 誰がAIを管理し、独裁を防ぐのか?(統治の核心)#

「宇宙標準のAIがスキルを判定し、システムがペナルティを与える」と聞くと、必ず一つの致命的な問いが浮かび上がる。 「そのフルオートのAIシステムを書き換えられる権限(鍵)を持っている人間が、新たな独裁者になるのではないか?」

宇宙政府は無政府主義ではなく、一定の強制執行(システムペナルティなど)の必要性を認めている。武力やペナルティを持つ以上、その権力をどう統制するかが最大の課題となる。

官僚的な「ハンコリレー」に代わる「マルチシグ(相互監視)」#

旧来の国家は、この独裁を防ぐために「三権分立」や「何人もの役人のハンコが必要な承認プロセス」という儀式を作ってきた。しかし、宇宙政府が採用するのはそうした儀式ではない。技術的な権力の分散だ。

  • 単独では変更できない複数の独立した鍵:システムの起動、停止、評価アルゴリズムの改変には、複数の独立した研究者、技術者、経営者、あるいは利用者の代表による合意(暗号技術を用いたマルチシグネチャなど)が不可欠な設計とする。誰か一人が勝手に自分に有利なようにモデルの重みを書き換えることは、物理的・技術的に不可能にする。
  • 改ざん不可能な記録の公開:誰がいつどのような変更を提案し、誰が承認したのかという履歴は、ブロックチェーン的な仕組みを用いてすべて公開され、後から検証可能にする。
  • 自動的なロールバック機構:不正な改変が検知された場合、システムを即座に安全な状態に戻す自律的な機構を備える。

宇宙政府が目指すのは、「誰も強制力を持たないユートピア」ではない。「権力を少数の人間に集中させず、透明で検証可能なアルゴリズムと複数人による相互監視構造(ガバナンス)に分散させる新しい統治機構」である。

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8. 初期段階のアカウント認証と理想論の罠――なぜ「最初から何の情報も集めない純粋主義」を拒絶するのか#

「マニフェストでは『個人情報の抱き合わせを解体する』『ゼロ知識証明で属性のみ証明する』と掲げているのに、実際のサイトではGoogleアカウント等によるログイン・登録窓口を置いているではないか。これは思想と実装の矛盾ではないか?」という批判がある。

宇宙政府の回答:純粋主義(何の情報も持たない理想論)は自滅である#

宇宙政府は、この批判に対して「初期段階において、何の情報も集めないような非現実的な純粋主義は一切採用しない」と明確に回答する。

  1. 実効的な連絡網のない運動はただの空論で終わる
  2. どれほど美しいホワイトペーパーを書いても、実際に連絡が取れる支持者、当事者、政策検証の協力者コミュニティが存在しなければ、社会プロトコルとしての実装力はゼロである。何の情報も持たずに「完全分散」を気取るのは、現実の社会を変える責任の放棄であり、単なる「机上のオカルト」にすぎない。

  1. 「段階的移行(プラグマティズム)」の徹底
  2. - フェーズ1(現在):Googleアカウント等の標準的なWeb認証ツールを活用し、パスワード管理の負担なく当事者や支持者の実効的な連絡網とコミュニティを確実に組織化する。 - フェーズ2:政策評価カードや生活コスト比較ツールを普及させ、データに基づく制度検証を行う。 - フェーズ3:ゼロ知識証明(ZK-KYC)やDID、マルチシグなどの暗号技術プロトコルへ段階的に機能を移行・アンバンドリングする。

  1. 「強制」と「同意に基づく連絡」の区別、および「即時EXIT」の保証
  2. 国家の悪辣さは「生まれながらに全個人情報を強制的に抱き合わせ、一生涯そこから逃げられない」点にある。 宇宙政府のアカウント認証は自発的な参加であり、「いつでもマイポータルからワンクリックで全データを完全消去して即座に退出(EXIT)できる」仕組みを最初から備えている。

神聖な純潔主義に逃げ込むのではなく、泥臭く現実の連絡網と社会実装を構築することこそが、宇宙政府のプラグマティズムである。

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9. 「退出可能性」の実装――「データ持ち出し(可搬性)」と「完全消去(EXIT)」の二段構え#

「退出すればワンクリックで全データ消去とあるが、これはデータポータビリティ(持ち出し)と矛盾しないか? また、現行の健康保険や年金からの部分退出など不可能なのだから、机上の空論ではないか?」という批判がある。

宇宙政府の回答:二段構えのプロトコルとミクロな部分退出#

  1. 「持ち出し(Export)」→「完全消去(Purge)」の二段階ワークフロー
  2. - 宇宙政府ポータルでは、「データのエクスポート」と「アカウント削除」を独立して連動させている。 - 退出を希望する利用者は、まず自らの活動実績、署名履歴、プロファイルを機械可読な標準形式(JSON / DID形式)でワンクリックダウンロードできる。 - その後、サーバーおよびローカルストレージ内の全データを完全に不可逆抹消する「完全退出」を実行する。これにより、持ち出しとプライバシー保護を両立させる。

  1. 公的サービスからの「ミクロな部分退出」の実践
  2. - 健康保険や年金などの国家制度を個人が今すぐ一括離脱することは法的に不可能である。 - だからこそ、宇宙政府は「今すぐ個人ができるミクロな部分退出」から順次実証する。 - 通貨の退出:給与・報酬の一部をBitcoinで受け取る比率設定(労使合意書テンプレートの提供)。 - 資格・信用の退出:国家の天下り団体に頼らないオープンな活動実績(Verifiable Credentials)の蓄積。 - 政策判断の退出:お上の発表を鵜呑みにせず、「政策評価カード」で公金配分を独自検証する。

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10. AI判定とシステムペナルティの専制化・誤検知リスク――誰が鍵保有者を決め、どう救済するのか?#

「マルチシグや改ざん不能ログは単なる技術的対策にすぎない。誰が複数の鍵を持つ者を選ぶのか? また、AIの異常検知によるペナルティが誤検知やバイアスを生んだ場合、弱者が不当に排除されるのではないか?」という指摘がある。

宇宙政府の回答:Human-in-the-Loopと異議申立・救済プロトコル#

  1. 鍵保有者(マルチシグ署名者)の選出とリコール設計
  2. - 恒久的な管理者は存在せず、鍵保有者は任期制とし、宇宙議会(オープンコミュニティ)における公開選出と、不信任(リコール)プロトコルによって随時交代可能とする。 - 鍵保有者の選定基準は、技術的知見、当事者性、利害関係の開示を前提とする。

  1. 重大な決定における「人間の介在(Human-in-the-Loop)」の原則
  2. - 資格剥奪、アカウント停止、重大なシステムペナルティなど、個人の権利に重大な影響を及ぼす処分において、「AI単独による全自動の最終決定」を明示的に禁止する。 - AIはあくまで異常検知やスコアリングの「監査補助」に留め、最終処分には独立した複数の人間審査員による合議と署名を必須とする。

  1. 異議申立て(救済・アピール)と暫定停止措置
  2. - 判定に不服がある場合、1ステップで異議申立てを行えるオンプズマン窓口を常設する。 - 異議申立てが受理された場合、審査が完了するまでペナルティの執行を暫定停止(ロールバック)し、誤検知による弱者排除を防止する。

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この論考自身の検証#

さて、この論考自体が、挙げられた10の弱点に対してどこまで答えられたかを自己評価しておこう。

  • 検証可能なデータがゼロ → 政策評価カードの実例を一つ作った
  • 退出はお金持ちの特権 → 三つの具体的な設計原則を提示した
  • 分離のコストが無視されている → 「提供主体の競争化」という真の狙いを明らかにした
  • 命に関わる資格の設計 → AI異常検知と市場の選択という代替案を提示した
  • 通貨の位置づけ → 核心ではないことを明言した
  • 思想的ルーツが不明 → 主要な思想との重なりと違いを整理した
  • 独裁を防ぐ仕組みがない → 複数人による合意と検証(マルチシグ)という技術的な統治構造を提示した
  • 初期フォームと思想のギャップ → 純粋主義を拒絶し、段階的移行と即時EXIT保証の現実路線を明記した
  • データ持ち出しと消去の矛盾 → 二段構えのポータビリティ&完全抹消フローを定義した
  • AI判定の誤検知・専制化 → Human-in-the-Loopと異議申立・暫定停止の救済原則を明記した

しかし、これで「完璧に論破した」などとふんぞり返るつもりはない。政策評価カードはまだ実例を増やしている最中であり、退出や救済のプロトコルもコードとコミュニティ運用の中で常にテストされ、改善され続けるべきものだ。

宇宙政府が単なる「理想論を語るサイト」から「実証するプロジェクト」へとステップアップできるかどうかは、この「言葉だけの回答」を「実際に動いている仕組み」に変えていけるかどうかにかかっている。

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